ボーはおそれている



どうも、松本です。

今回は映画、『ボーはおそれている』についてです。


まずは簡単な概要とあらすじから。


【概要】

『ボーはおそれている』は、2023年制作のアメリカ合衆国のホラー・コメディ映画。ホアキン・フェニックス主演。


【あらすじ】

ボーは些細なことでも心配になってしまう怖がりの男性だった。ある日、先ほどまで電話をしていた母の怪死の報せを受け、帰郷しようとするボーだったが、アパートの玄関を開けると、目の前に広がるのはいつもの日常ではなく、現実とも妄想ともつかぬ世界だった…



『ミッドサマー』のアリ・アスター監督作品、『ジョーカー』のホアキン・フェニックス主演。ミッドサマーをはじめ数々の地獄のような映画を世界中にばらまいてきたA24が配給。


もうこれだけでいい予感は全くしないわけです。地獄の地獄は確定しているわけです。


正直これほど間違いない組み合わせというのもそうはないんじゃないかなと。


ホアキン・フェニックス主演の地獄のような映画というと、そのインパクトが絶大だっただけにどうしても『ジョーカー』を思い浮かべてしまうのですが。


とはいえ今作でホアキン・フェニックスが演じる主人公もジョーカーと少し似ている部分があるかと思います。


まず精神的に不安定。精神科に通院しています。


そして住んでいる街の治安が最高に終わっているという部分もジョーカーと共通です。主人公が住む街はゴッサムシティ以上の地獄っぷりです。


正直言うと私はこの映画は全然わかりませんでした。


分かったふりをしてそれっぽい解釈をすることも可能ですし、ある意味そういう楽しみ方ができる映画でもあると思いますが。


この映画にしても、クリストファー・ノーランの『TENET』のような映画にしても、アカデミー賞受賞で話題となった『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

にしても、私個人としてはわかったようでわからない解釈をするよりは、素直に「わからない」でいいかなと。


火薬量がものをいう脳筋映画や「うんこ!ちんちん!デュクシ!」で育った人間がこんな映画理解できるわけがないんですよ。


とはいえこの映画はわからないなりに楽しむことのできる映画でもあるかと思いますし、わからないというスタート地点からの周回プレイというのも大いにありかと思います。


うろ覚えではありますがアリ・アスター監督が確かインタビューで「この映画はニ週目からが面白い」というような発言をしていましたし。


なので私も一周目は全く訳がわからなかったのでもう一周してみました。


ちなみにニ周した後の感想もやはり「わからない」でした。


この映画は本当にストーリーからしてよくわからないのですが、とりあえず主人公であるボーが現実か幻覚かよくわからない不条理な世界で散々な目に合うということは確かかと思います。


とにかく冒頭から不穏な描写のオンパレード。


それでもまだある程度は理解できるレベルだったのですが、天井からおっさんが降ってきたあたりからいよいよわけがわからなくなってきます。


天井からおっさんが降ってくること自体がもうよくわからないのですが、とにもかくにもそこから物語が動き出します。


そこからはとにかく不条理の連続。この映画には不条理という言葉が本当によく似合うと思います。 シュールや超展開とは少しニュアンスの違う不条理という言葉が。


そんな不条理な世界の中でホアキン・フェニックスが本当にもう散々な目に遭うのですが、その時々のリアクションがこれまた素晴らしい。あえて演技と言わずリアクションと言いますが。


よくわからない内容の映画、かつ上映時間が三時間という長時間。普通だったら相当に苦痛を感じるはずなのですが、この映画は一周目も二周目も一切苦痛や退屈を感じることはありませんでした。


それはホアキン・フェニックスという俳優の存在感によるところも大きいかと思います。とにかく内容はよくわからないのだけれど散々な目に合うホアキン・フェニックスのそのリアクションの数々だけでも三時間は余裕でいけちゃうんですよね。


もちろんそれはアリ・アスター監督の素晴らしい仕事あってのことかとは思いますが。


内容のよくわからない長尺な映画ですが、大体ニ〜三十分ぐらいで作中の舞台は転換していきます。不条理からさらなる不条理へ。地獄から別の地獄へ。


その部分のテンポがとてもいいので退屈をすることがありません 。


そしてそれらの場面場面はとても引きつけられる内容です。ただそれら全てが一つの解釈として繋がらないだけで。


ストーリーの大枠についてはある程度理解できますし、それなりのオチもつきます。作中の様々な場面の意味も分かります。ただそれを一つの映画として解釈しようとすると途端にわからない。


その部分は「不条理コメディだから」と言う言葉で片付けてしまうのがいいのか、それとも何かしらの深い考察が必要なのか、その部分もよくわからなかったりします。


そう、この映画はコメディ映画なのですよね。


その部分は私も承知の上で見たのですが、とはいえ監督はアリ・アスター。これまでに撮った作品はもう他に類を見ないレベルの地獄の地獄でした。


そんなアリ・アスター監督がコメディを撮ると言っても全く信用できないわけです。ということで私は相当な警戒心を持ってこの映画を見ました。


結果、よくわからなかったのでもう一回見てみました。今度はある程度コメディ目線で。


それでもやはりよく分かりませんでした。


過去のアリ・アスター監督作品が強烈すぎてどうしてもこの映画をフラットな気持ちで見れないんですよね 。


アリ・アスター監督作品にはこれまで散々心をぶん殴られてきたのでどうしても身構えてしまいます。


逆にアリ・アスター監督作品に何の思い入れもトラウマもない人の方がこの映画を楽しめるのかもしれません。この映画を純粋なコメディとして。


この映画はコメディとして制作されただけあり、過去のアリ・アスター作品に比べるとグロ要素やトラウマ要素は相当に控えめです。


決してそれらの要素が皆無というわけではないのですが、過去の監督作品に比べたらほとんど無いに等しいレベルです。


過去のアリ・アスター監督作品と言ったら、見る側の精神を絶妙に不快にさせ、不安定にさせる鑑賞ストレス天元突破なトラウマ製造機でした。


アリ・アスター監督はとにかくそのような仕事にたけた監督なのですが、この映画はそんな監督があえてそれらをR15レベルに抑えて、これまでのような地獄のホラーではなく、比較的一般向けなコメディとして作ったものなのだと思います。


作中にそれなりに不快な描写や過激な描写は出てくるのですが、とはいえ鑑賞ストレスは感じないレベル。人の精神を不快にさせたり不安定にさせたりすることを熟知した人だからこそ、そういう絶妙なさじ加減ができたのだと思います。


そもそも内容がよくわからない難解な三時間の映画を見るというのは相当なストレスになるはず。しかも過激描写山盛りな地獄の世界観。


そんな映画を一切の退屈も苦痛もなしに見れるというのは本当にすごいことだと思います。


アリ・アスター監督作品の映像体験としても、ホアキン・フェニックスの役者としての素晴らしい仕事にしても、それらを全く知らないフラットな状態でも、とにかく一見の価値はある作品かと思います。


これまでのアリ・アスター 作品同様、ハマる人はとことんハマる作品かと。そうでなくても一度は通っておいて損はない類の作品かと思います。


ただ一つ注意しなければいけないのは、この作品でアリ・アスター 監督に興味を持って過去作品を見る際は相当な警戒が必要だということです。


この作品と同じようなテンションで見ると心に深い傷を負ってしまいかねないので。人によっては一生モノのトラウマを。


というわけで今回はこの辺で。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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