哀しき獣

 

どうも、松本です。

今回は映画『哀しき獣』についてです。

まずは簡単な概要とあらすじから。

【概要】

『哀しき獣』は、2010年公開の韓国のサスペンス映画。『チェイサー』のナ・ホンジンが脚本と監督を務めた。

【あらすじ】

中国の延辺朝鮮族自治州のタクシー運転手グナムは、借金の取り立てに追われ、韓国に出稼ぎに行った妻からは送金も連絡も途絶えていた。借金を返そうと賭け麻雀に手を出し、さらに窮地に陥ってしまったグナムは、犬の売買を商い裏で殺人請負業をしているミョンから、韓国へ行ってある人間を殺したら借金を帳消しにすると持ちかけられる。グナムは苦悩の末、取立てを逃れ、妻にも会いたいという気持ちから密航船に乗って黄海を渡る…

ナ・ホンジン監督のサスペンス映画ということで既に名作フラグが立っていますが、この映画はそのフラグ通りの大傑作です。

ナ・ホンジン監督作品、そして韓国サスペンス、そう聞いて期待するもののほとんどはこの映画1本で叶います。

ナ・ホンジン監督のサスペンス映画となると、相当に期待値も高くなるのに、毎回その期待値の上の上を行くのは本当にすごいことだと思います。

毎回さらっとやっちゃってるから気付きづらいですけど毎回あれだけのクオリティの映画を作るのは並大抵のことではないと思います。

前作チェイサーは元刑事のデリヘル店長というなかなかに香ばしい経歴を持つ主人公でしたが、今回も嫁に逃げられギャンブルで借金漬けなタクシーの運ちゃんというかなり香ばしい人物が主人公です。

そんな主人公が人生一発逆転するために闇バイトに手を出すという、闇金ウシジマくんかカイジにでもありそうなストーリー。そんな冒頭でもうめちゃくちゃ引き込まれる訳です。

もちろんそんなバイトがまともな仕事である訳なく、 内容は殺人。

ということで中国から韓国へ地獄の出張がスタート。

チェイサーと哀しき獣の主人公はぱっと見が似ているというわけではないのですが、しかし同じ監督の映画ということもあってか共通点はそれなりにあります。

どちらも死んだ目をした中年男。性格は基本的にクズ。デリヘルで女性をこき使ったり闇バイトに手を出したりと、価値観も普通の人のそれとは大分違います。

しかしながらどちらも子供の前では多少マシになります。あくまでも多少。普段がクズすぎるのでその反動で必要以上にまともに見えているだけなのですが。

そして最大のポイントはどちらもめちゃくちゃ喧嘩が強いということ。

今回も請負殺人で韓国に渡った後に、それこそ地獄の地獄の展開が待っているのですが、どんな窮地に陥ってもなんとかそれを乗り切ります。もちろん無傷ではないのですが。

要所要所で頭も切れます。それらの才能をまともな方面で活かすことができたのなら、こんなことにはならなかっただろうにと思わないでもないのですが。

そしてこの映画と言ったら何と言っても悪役であるミョン社長。

まあ悪役と言ってもこの映画に出てくる人間は主人公も含めだいたい全員悪人ではあるのですが。

とはいえこの映画のミョン社長はそれこそ主役を食ってしまうレベルの活躍ぶり。そして圧倒的な存在感。

ただ単純なかっこよさとは少し違うと思いますが、とにかくサスペンス映画における悪役としてはこれ以上にないくらいの素晴らしさです。

もちろん万人受けするようなタイプではありませんが、とはいえ韓国サスペンスを好んでみるような人間の好みは多少なりともねじ曲がっているかと思いますので、そのような人にはとにかくぶっ刺さる悪役だと思います。

見た目はまさにザ・蛮族といった見た目。食事もでっかい骨付き肉とか食っちゃってます。

しかも吹き替えはジェイソン・ステイサムでお馴染みの山路和弘さん。韓国映画は基本字幕で見る派なのですが、この映画に限っては吹き替え推奨。

そんなミョン社長が斧を片手に血まみれで大暴れ。韓国映画で凶暴なおっさんが斧を片手に大暴れ。それだけで食指の動く人も多いはず。

斧を片手に無双するその姿はまさに豪傑そのもの。

この映画のミョン社長は間違いなく韓国映画史に残るレベルの名悪役だと思います。

韓国映画の血みどろサスペンスというのは、悪役の層が非常に分厚く、特に凶暴なおっさんなんていうのは腐るほどいるわけなので、その中で突出するというのは言うほど簡単なことではありません。

特に韓国映画は凶暴なおっさんというジャンルでは世界一と言っても決して大げさではないと思います。

そんなミョン社長の韓国映画至上、トップクラスの名悪役っぷりは必見です。そのためだけにこの映画を見る価値も十分にあると思います。

見た目や強さはもちろんのこと、ちょっとした仕草や言動にまたしびれるものがあります。決して正しくはないのだけれど、ただ 悪役として1本筋が通っているというか。

個人的には『ダークナイト』のジョーカーや、『孤狼の血 LEVEL2』の上林レベルの神がかりっぷりだと思っています。さすがにヒース・レジャーのジョーカーを超えたとは言い切れませんが。とはいえそれらと並べても遜色ないレベルの悪役っぷりである事は間違いありません。

しかも演じる俳優はチェイサー で主人公を演じたキム・ユンソクだと言うのだから驚きです。言われなければそう気付かない人も多いはず。

きっかけは自業自得とはいえ、そんな悪役とやり合うハメになってしまうのですから主人公はそれこそ哀しき獣そのもの。

主人公の獣の部分は映画の冒頭で十分にわかるのですが、そんな獣のどこがどう哀しいのか、その部分もこの映画の見どころの一つです。

名悪役の登場する映画は大抵名作だったりします。この映画も同様です。ただ名悪役役が出るだけでなく、1本の映画としても相当に面白いです。

最後の最後の大ドンデン返しから韓国サスペンス名物血まみれバトルまで見どころは満載。

見終わった後はきっととてつもなく虚しい気分を味わえるはず。もちろんいい意味で。

というわけで今回はこの辺で。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。