スキャナー・ダークリー



どうも、松本です。

今回は映画、『スキャナー・ダークリー』についてです。


まずは簡単な概要とあらすじから。


【概要】

『スキャナー・ダークリー』は、2006年のアメリカSFアニメーション映画。

原作はフィリップ・K・ディックによる『暗闇のスキャナー』。リチャード・リンクレイター監督、キアヌ・リーブス主演。

【あらすじ】

ドラッグが蔓延した近未来で自らジャンキーとなり、おとり捜査を開始した刑事。しかし、彼の中で捜査官とジャンキーという2つの人格が分裂を始め、彼は次第に自らのアイデンティティを見失っていく…



この映画の監督はリチャード・リンクレイター。『スクール・オブ・ロック』のような娯楽色の強い作品から、『6歳の僕が大人になるまで』のような批評家からも観客からも大絶賛され数々の賞を受賞するような名作、『ウェイキング・ライフ』のようなトリップムービーの隠れた名作まで様々な作品を監督しています。


リチャード・リンクレイターはとにかく大衆的な作品から作家性の強いマニアックな作品まで、様々な映画を撮っている振れ幅の大きい映画監督です。


振れ幅の大きい映画監督にありがちなのが当たり外れの多さですが、リチャード・リンクレイターの場合はどちらに触れてもほとんどが当たりなので、そういう意味では個人的にとても信頼を寄せている映画監督です。


世間一般的にはリチャード・リンクレーターという名前よりも、スクール・オブ・ロックの監督と言った方が通じるかもしれませんが。


とはいえ世界中にファンの多い著名な監督であることは間違いありません。


ちなみに今作の原作はフィリップ・K・ディック。アメリカSF界の巨匠、と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、どちらにしても伝説的な作家であることは間違いありません。


フィリップ ・K・ディックという作家名で分からなくとも、『ブレードランナー』や『トータル・リコール』の原作者と聞けばわかる人も多いかと思います。


スキャナー・ダークリーはそんなフィリップ・K・ディックの小説、『暗闇のスキャナー』の映画化作品です。


しかも主演はキアヌ・リーブス。


スキャナー・ダークリーの公開は2006年なので『マトリックス』シリーズの完結から数年後。


『コンスタンティン』や『地球が静止する日』などの話題作の合間に公開されたせいか、キアヌ・リーブス主演作品としてはいまいち知名度が低かったりします。


キアヌ・リーブス主演作品には、『スピード』や『マトリックス』、『ジョン・ウィック』など、歴史的名作が多々ありますが、その合間には迷作や怪作、駄作との呼び声の高い映画も多々あったりします。


知名度の低さからか、スキャナー・ダークリーもそのようなキアヌ・リーブスのハズレ映画に分類されがちですが、スキャナー・ダークリーに限っては決してハズレでも駄作でもありません。


フィリップ・K・ディック原作のドラッグムービーですので、見る人を選ぶことは確かですし、作品としても誰もが100点満点をつけられるというような優等生な作品ではないかと思います。


とはいえ映像体験として一度は通っておいても損はないレベルの作品だと思います。


スキャナー・ダークリーは一見するとアニメ作品のようですが、現実と幻覚とを曖昧にする表現手段として俳優を撮影した実写映像をトレースしてアニメーション化するロトスコープという技法によって制作されているので、アニメとの見方もできるかもしれませんが、 実写作品として見ることもできるかと思います。


作家性の強い実験的な作品と言うとどうしても一見さんお断りな、一部マニアしかついてこれないようなイメージを持っている人もいるかと思いますが、スキャナー・ダークリーについては決して映像だけの映画というわけではなく、ストーリーに関してもその中のSF要素などに関しても、とてもしっかりしているので置いてけぼりの意味不明ということはまずないかと思います。


とにかくこの手の前衛的な映画というのは、それだけである一定の層は拒否反応を示してしまったりするものですが、スキャナー・ダークリーの場合、知る人ぞ知る鬼才が作った評論家やコアなファンしか理解できない映画ではありません。


むしろリチャード・リンクレイターのような著名な監督が、これまた著名なSF作家であるフィリップ・K・ディックの原作を、これまた著名な俳優であるキアヌリーブス主演で作っているのですからこの手の映画にしては入り口はかなり広いと思います。


にもかかわらずこの映画の知名度が低いのは残念としか言いようがありません。


知名度が全くないというわけではないのですが、リチャード・リンクレイター監督作としても、フィリップ・K・ディック原作としても、キアヌ・リーブス主演作品としても、それらの他作品に比べると知名度は一段も二段も劣ると言わざるを得ません。


仮にスキャナー・ダークリーが駄作であるのならば仕方がないかと思いますが、作品の内容が優れているにも関わらず、知名度がついてきていないのは非常に勿体ないなと思います。


前述したようにこの映画は一般的な娯楽作品というわけではありませんが、とはいえ決して深い考察や解説なしでは理解できない難解な作品というわけでもありません。


リチャード・リンクレイター、フィリップ・K・ディック、キアヌ・リーブスという入り口の広さもあるので、彼らの作品の一作として見ておいても損はない映画だと思います。


もちろんそれだけではなく、ドラッグムービー好きな人にもおすすめです。変則ムービーや鬱映画などが好きな人にも。


とにかく普通ではない映画やオルタナティブな映像作品が好きな人にとってはこれ以上にない映画かと思います。


特にトリップムービーが好きな人にとってはこの映画は間違いなくおすすめ。



日本のトリップムービーと言うと押井守、今敏、湯浅政明監督などのアニメ作品の表現が有名かと思いますし、その手の表現が好きという人も結構多いかと思います。


そのような人にはスキャナー・ダークリーは間違いなくおすすめです。


この映画に限ったことではないですが、トリップ ムービーは見る人によって激しく好みが分かれるので、この映画のトリップ表現がツボにはまるかどうかは分かりませんが、刺さる人には相当刺さるのではないかと思います。


ちなみにトリップ・ムービーとしてはリチャード・リンクレイターが以前に撮った『ウェイキング・ライフ』という映画も激しくおすすめです。


私自身、アニメのトリップムービーと言うと前述した日本のアニメ界の巨匠の作品ばかりを思い浮かべるのですが、その中で唯一同水準で思い浮かぶ海外作品がロストスコープを使用して撮影されたリチャード・リンクレイター作品だったりします。


監督、原作、主演俳優にしても内容にしても、意外ととっつきやすいポイントの多い映画です。そして他にはない映像体験ができるということはまず間違いありません。


刺さる人にとってはマイベストランクの上位に位置するくらいの作品ですので、興味がある方は是非一度見てみてください。


ドラッグ映画という特性上、明るく楽しい作品ではありませんが、とはいえ心に残る物は必ずあるはず。


というわけで今回はこの辺で。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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