Sharper:騙す人



どうも、松本13です。

今回は、『Sharper:騙す人』についてです。


まずは簡単な概要とあらすじから。



【概要】

『Sharper:騙す人』は2023年にアメリカで制作されたクライム・サスペンス映画。出演はジュリアン・ムーア、セバスチャン・スタンなど。配給はA24。


【あらすじ】

ニューヨークで小さな書店を営む青年トム。ある日、彼は1冊の本を求めて店にやって来た大学院生サンドラと親しくなり、瞬く間に恋に落ちるが…


尖った映画からトラウマ製造機まで、様々な「普通じゃない」映画を配給してきたA24によるサスペンス映画。


しかも題材が詐欺と来たらもうその時点でハッピーエンドはないわけで、十中八九地獄の地獄が待っていると警戒しておいた方がいいわけで。


一口にA24配給作品と言っても様々な種類があるのですが、この映画は現実的な映画です。超自然的な何かしらの現象も起こりませんし、悪霊やクリーチャーも出てきません。


ビジュアル的にはちょっと地味だったりもするのですが、ただ内容の方はめちゃくちゃに面白いです。


個人的にサスペンス映画は好きなので、それなりの本数は見ているのですが、その中でもかなり上位に来るくらい面白い作品だと思いました。


例えば名作サスペンス映画ランキング上位常連の『ユージュアル・サスペクツ』の前後に見ても見劣りしないくらい。


個人的にはそこまで言い切ってしまっても全く問題ないレベルに面白い作品でした。


にもかかわらず、そこまでの知名度がないのが残念なところです。この映画は本当に隠れた名作だと思います。


個人的にはもっと評価もされていいと思うのですが。作品としての不足は一切感じませんでしたし、サスペンス映画としてのツッコミどころも一切感じませんでした。


大味映画が好きな私のような人間に感じられない何かしらはあったのかもしれませんが。


とはいえこの映画を見て残念な気持ちになる人はそうはいないと思います。楽に見れる大衆映画として見たならともかく、サスペンス映画として見たのなら。


A24配給のサスペンス作品ということもあり、私は相当な期待値を持ってみたのですが、それでも大満足でした。


先の読めないストーリーから大どんでん返しに至るまで、サスペンス映画に求める要素は全て揃っています。


あえてケチをつけるとしたらビジュアルが若干地味なところでしょうか?


現状のビジュアルに問題があるというわけではないのですが、とはいえ現状だと刺さる人には刺さるけど、アンテナを立てていない人はスルーしてしまうこともあるかなと。


それこそ日本にありがちな下品な煽り文句をこれでもかというぐらいに詰め込んで猛プッシュしてもいいんじゃないかと。


現状でも知る人ぞ知る名作というレベルではあるかと思うのですが、この映画は特定ジャンルの愛好家だけの映画ではなく、多くの人が楽しめる素晴らしい映画だと思います。


特にA24配給作品はこれでもかというくらいに見る人を選ぶ作品が多いので、その中では本当に万人に向けて自信を持っておすすめできる稀有な作品ではないかと思います。


かと言って別に内容が甘いとかそういうわけではなく、むしろめちゃくちゃに優れている映画です。


この映画は様々な登場人物の視点で描かれる群像劇方式で物語が進んでいきます。これは個人的な持論なのですが、基本的に群像劇に駄作はないと思っています。


というか群像劇というのは大抵面白かったりするんですよね。そもそも群像劇というのは作品としての難易度が結構高いものだと思うので。作品として成立させるだけでも結構難しかったりすると思うのですよね。


そこにあえて手を出すというのは技量にそれなりに自信がないとできることではないと思うので。半端に手を出せるジャンルではないと思います。それなりの技量がないと物語として成立させることすらできないので。


そんな群像劇方式で物語が進んでいくのですが、中盤あたりからジュリアン・ムーアが登場します。


もう彼女が出てきた時点で嫌な予感しかしません。


そもそもA24配給のサスペンス映画という時点で悪い予感しかしないのに、さらにジュリアン・ムーアが登場するのだからたまったものではありません。


私にとってそれくらいジュリアン・ムーアというのは見る側を不安定な気持ちにさせる俳優です。


それくらいに過去の名作の数々での名演はすさまじく、かと思ったらとんでもない駄作に出ていたりと、そういう部分も含めかなり不安定。


男性俳優の場合、ウィレム・デフォー、 コリン・ファレル、イーサン・ホークやジュード・ロウなど、出て来た瞬間に「どっち!?」となってしまう、その手の俳優は結構いたりするのですが、女性俳優の場合個人的にそこまで数が多くないので、そういう意味でもジュリアン・ムーアというのは私にとって稀有な存在の俳優とも言えます。


そんなサスペンス映画としては期待値が上がりまくりフラグが立ちまくりな今作品なのですが、それらのはるか上を行く内容と結末、そして何と言ってもカタルシス。


カタルシスという感覚はなんかちょっと小難しい感じがしてわからないという人もいるかと思うのですが、そんな人にこそこの映画はおすすめです。


結局カタルシスというのは感覚の問題なので、言葉で説明するより実際に感じてもらうのが手っ取り早いかと思います。


サウナの「ととのう」と同様。実際に経験してみるのが一番かと。そしてサウナのそれと同様に感じたいけど感じられないという人も多々いるかと思います。


単なる立ちくらみをととのうと勘違いしている人もいるように、カタルシスを鑑賞ストレスからの解放と勘違いしている人もいたりします。


それが良質の鑑賞ストレスならばともかく、低品質なものであればそれは単なる解放感であり、カタルシスとは似て非なるものだと思います。


個人的にこの映画を最後まで見て感じられる感覚こそ、映画特有の「ザ・カタルシス」 だと思います。そしてそれらを多く感じられるのが、この映画が他のサスペンスより頭一つ抜きん出ている部分だと思います。


個人的に鑑賞後のこの感じがなければ、この作品をここまで絶賛することはなかったと思うのですが。逆に言うとその部分で刺さることがないとこの映画の評価も違ってきてしまうかもしれませんが。


そんな好みによる部分はあるかもしれませんが、とはいえサスペンス映画としては非常によくできた映画ですので、一度は見ておいても損はないと思います。


個人的にはめちゃくちゃおすすめです。


サスペンス映画好きな人にはもちろんですが、『アフタースクール』や『鍵泥棒のメソッド』などの内田けんじ監督作品が好きな人にも激しくおすすめしたいです。


この作品は二転三転するストーリーから大どんでん返し、鑑賞後に感じるカタルシスまで、内田けんじ監督作品のそれと非常によく似ていると思いました。


うまく言語化できないのですが、この映画や内田けんじ監督作品に感じるあの感じというのは、ありそうでなかなかないものですので、そういう意味でもこの映画は貴重な作品だなと思いました。


というわけで今回はこの辺で。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。



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