君たちはどう生きるか
どうも、松本13です。 今回は、『君たちはどう生きるか』についてです。
まずは簡単な概要とあらすじから。
【概要】
『君たちはどう生きるか』は、2023年公開のスタジオジブリ制作による日本のアニメーション映画。原作・脚本・監督は宮﨑駿。
【あらすじ】
母親を火事で失った少年・眞人(まひと)は父の勝一とともに東京を離れ、「青鷺屋敷」と呼ばれる広大なお屋敷に引っ越してくる。亡き母の妹であり、新たな母親になった夏子に対して複雑な感情を抱き、転校先の学校でも孤立した日々を送る眞人。そんな彼の前にある日、鳥と人間の姿を行き来する不思議な青サギが現れる…
この映画のすごいところは一切のプロモーションを行わなかったことだと思います。
そもそもここまでの大作で一切プロモーションを行わないという決断をできること自体がとてつもないと思いますし、しかもそれで大成功するというところも凄まじい。
真似しようと思ってもなかなかできないことだと思います。
プロモーションが無いというのは、この映画の魅力のひとつでもあるかと思います。タイトル以外の内容は一切わからない状態で映画を見るという体験って、ジブリの宮崎駿監督作品レベルの大作ではまずありえないことかと思うので。
そういう意味では公開からしばらく経って、情報が出尽くし、アカデミー賞受賞などでもそれなりに内容が漏れ伝わってきた今となっては、その部分の魅力は損なわれてしまったかと思うのですが。
もしまだこの映画についてよくわかっていないのであれば、今すぐ全ての情報をシャットアウトして、この映画を見てみることをおすすめします。
それがこの映画を何よりも楽しむ方法だと思いますので。
とはいえ多少内容を知っていたとしても普通に楽しむことはできますし、そもそも映画としてはそれが普通の状態。
この映画は日本だけでなく世界中で絶賛されていますが、それでもこれまでの宮崎駿監督作品に比べると若干賛否両論の気が強いかなといった印象です。
その部分の原因は多々あるかと思うのですが、プロモーションを一切行わなかった故、期待したものと内容が違ったという点もあるかと思います。
それと登場人物及びキャラの一部が見方によっては気持ち悪いと感じてしまうこと。
これまでの宮崎駿監督作品にもそのようなキャラや描写は多々あったかと思うのですが、割と登場頻度が高いところにそういうキャラがいたりするんですよね。
それこそ他の作品では魅力的なキャラや美男美女がいたような立ち位置に。
ただキャラとしての魅力が全くないわけではなく、それも含めた世界観としては十分に素晴らしいのですが。ただそこは明確な賛否両論点になるかなと思います。
この映画の解釈や楽しみ方というのは人それぞれかと思うので、あくまで私個人としての意見ですが、この映画ってゴリゴリの異世界トリップ ムービーだと思うんですよね。
今で言うところの異世界転生的な側面もそれなりにあるかと思いますし、私としてはそれよりもクラシックな不思議の国のアリス的に感じられました。
この映画に限ったことではありませんが、トリップムービーって感覚的なことだけに好みがめちゃくちゃ分かれると思うんですよね。
人によってはめちゃくちゃぶっ刺さるのだけれど 、人によっては不快だったり、ちょっと怖かったり、トラウマになってしまうくらいだったり。
ディズニーの『ダンボ』のピンクの象や『ピングー』のトドなどがいい例かと思いますが。
押井守や今敏、湯浅政明などのアニメの映像表現が子供の頃は怖かったという人も結構いると思いますし。
なのでこの作品はそういう部分でもかなり好みが分かれるかと。あと小さな子供向けでもないんじゃないかと。
小さな子供でも見れないことはないかと思いますが、ただその子の感受性によっては下手するとトラウマになってしまうようなシーンもあるかと思います。
ただ宮崎駿監督作品って、どの作品においてもトラウマシーンの一つや二つはあったと思うんですよね。
『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』などについては特に。
そう考えるとトラウマ要素についてもこの映画に限った問題ではないかもしれませんが。
そんなトリップ描写満載の異世界転生的な展開に加えて、この映画は変則ムービー的な側面もあったりします。
詳細はネタバレなので伏せますが。
個人的にはそのようなストーリーに関してもこの作品の魅力の一つかと思います。
この作品を「意味不明」や、「よくわからない」と評する声も多々ありますが、ただ変則ムービーとしてはそこまで複雑なストーリーではないかと思います。あくまで一本道ではないだけで。
詳細は別としてストーリーの大枠については決して難解過ぎるわけでも、深い考察や解説などが必要なわけでもなく。
初見時はちょっと「あれ?」と思ってしまうかもしれませんが、ただ誰でも二周すれば普通にわかるレベルかと思います。
そういう意味では変則ムービーとしての難易度は相当に低め。その手のジャンルでは常人の頭では理解できないような作品も多々あったりしますし 、そもそも作り手すら分かっていない投げっぱなしエンドな作品も多々あるので。
変則ムービーとしては非常にシンプル。言い方を変えれば大味。
それでも中身がスカスカとならないのはストーリーの隙間に宮崎駿ワールドがぎっしりと詰まっているからだと思います。
誰もが期待するあの世界観やあの作画。
そこはもう本当に素晴らしいの一言に尽きるかなと。
この手の世界観って、この何十年で何人もが同じようなことをやろうとして、足元にも及ばなかった世界観だと思うんですよね。
宮崎駿監督作品の前作、『風立ちぬ』はファンタジー要素控えめな作品だったので、この手の世界観の作品は本当に久しぶりなのですが、やはり本家本元は違うなと心の底から思いました。
過去にアニメにおいてこのような世界観を目指したクリエイターの中にはとてつもなく才能や技術のある人も多々いました。
そんなそうそうたる面々でも、「ジブリっぽいことやりたいんだろうな」くらいのいたたまれなさを感じるだけで終わってしまいました。
ジブリや宮崎駿のこの手の作品って、大抵の日本人なら小さい頃から慣れ親しんでいるから当たり前のように感じられるかもしれませんが、これって相当にすごい物なんですよね。
そんな素晴らしい世界観の作品を今一度見ることができたのはとても幸せなことだと思いました。下手すればこれが最後となる可能性もありますし。
この作品の好みが分かれる部分については感覚的な問題なので本当に人にもよるかなと
『崖の上のポニョ』や『となりのトトロ』のような内容を期待せず、比較的対象年齢高めの前提で見れば、誰にとっても大傑作とまではいかずとも、大抵の人にとっては良作の範囲に収まる映画だと思います。
私事ではありますが、この作品の公開前後に、平成を代表する多くのアーティストの訃報が続きました。
平成に育った世代として、いまだかつて経験したことがないような喪失感に苛まれていた時にこの作品を見たので、この作品、というより宮崎駿というクリエイターの存在、そして彼がいまだに現役だという事にとても救われた気がしました。
というわけで今回はこの辺で。最後までお付き合いいただきありがとうございました。