『東京タクシー』:キムタクが思った以上に格好良くない(褒め言葉)
どうも、松本13です。今回は『東京タクシー』についてです。まずは簡単な概要とあらすじから。
【概要】
『東京タクシー』は、2025年11月21日公開の日本映画。2022年のフランス映画『パリタクシー』を、舞台を日本に置き換えてリメイクした作品となる。
【あらすじ】
仕事に追われるタクシー運転手の宇佐美浩二は、高野すみれという85歳の女性を東京の柴又から神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。すみれは浩二に東京の見納めにと、様々な場所へ寄り道を依頼する…
この映画、リメイク元である『パリタクシー』を知っているかどうかで、若干評価が違ってくる部分があるかと思うのですが、ひとまず原作を抜きにした映画単体としては、かなり面白い映画なんじゃないかと。
多作ゆえ、それなりに当たり外れがある山田洋次監督作品としては、間違いなく「当たり」の部類に入るかと思います。映画単体としてはもちろんのこと、山田洋次監督作品ならではの「人情物」としての期待も大いにしていいかと思います。
ただ今作、ありがちな人情物というわけではなく、原作がフランス映画ゆえ、結構シリアスな部分もあったりと、いつもの「山田洋次エッセンス」満載ながら、そうではない部分も多々あったりするので、そういう意味での「裏切り」みたいな部分も楽しめる作品なんじゃないかと。
山田洋次監督作品って、いつものパターンというか「様式美」を楽しむみたいな部分があると思うんですけど、そこに原作ものならではの「山田洋次らしからぬ展開」が入ってくる。その意外性が、めちゃくちゃ素晴らしく機能している作品なんですよね。
山田洋次監督作品だと、そこを好ましからぬ方向に改変しちゃったり……みたいなことも作品によってはあったりするのですが、今作に関してはそのようなこともなく、パリを舞台とした原作をめちゃくちゃうまいこと日本に落とし込んでいるな、といったところです。そういう意味での見どころも多々ある作品なので、一度見ておいても損はないんじゃないかと。
……というのが、原作要素抜きでの話。ただ、原作を踏まえるとちょっと話は変わってくるわけでして。
私も原作となった映画はめちゃくちゃ好きなのですが、本当にこの映画、山田洋次がめちゃくちゃ好きそうな人情物なんですよね。ゆえに、山田洋次がパリを東京に置き換えてリメイクすると聞いたときは、何の意外性も感じなかったのですが。ただ、問題は主演の木村拓哉でして。
個人的に、俳優・木村拓哉は好きでも嫌いでもないのですが、ただ彼の演技って良くも悪くもどの作品でも「キムタク」でして。それゆえに批判されることもあったりするのですが、個人的には「どの作品もいつものキムタクなのだけれど、ただそれ以上にはならないながら、絶対にそれ以下にもならない」みたいな妙な信頼はあったりするんですよね。
ただ、原作を知っている人は結構思うことだと思うのですが、この映画で主人公がキムタクって「ちょっとカッコよすぎな気がする」んですよね。原作って、見た目ちょっといかつい感じのゴリラみたいなおっさんですし、そんなおっさんが実は結構いい人、みたいなギャップも作品の魅力だったりするのですが。ゆえに「キムタクってどうなんだろう?」と思っていたのですが、個人的には思った以上に「アリ」でした。
キムタクも歳ですからね。結構、老け込んだおっさんになっていますし、タクシー運転手という役柄上、服装もかなりもっさりした感じでして、思った以上にカッコよくないんですよね(褒め言葉)。
それこそ全盛期は一部の隙もない完全無欠な、この国最強のイケメンでしたが、その後のSMAPの解散でのゴタゴタや、インスタの言動がちょっと痛々しかったり、ジャニーズ問題に関しても決して無関係ではありませんし、かつてほど完全無欠な存在ではなくなってしまったかと思うのですが。
ただ、問題の多いジャニーズタレントの中では、少なくとも現状かなりクリーンな存在ですし、実際、長年致命的なスキャンダルもなく、俳優としてもアーティストとしても実績はかなりあると思うのですが、にも関わらず何かあるたびに評価されるのは、同じSMAPで「丸出しローリングサンダー」かまして公然わいせつで現行犯逮捕されるも誰にも迷惑をかけなかった草彅剛くんの方で、キムタクはいつも叩かれ担当という。さすがにちょっと可哀想というか、過小評価され過ぎている部分はあると思うんですよね。
そういう部分の「不憫さ」というか「侘しさ」みたいなものを踏まえて見てみると、今作のキムタクのくたびれ具合って、かなりアリだと思いまして。良くも悪くも、キムタクって映画の中でもキムタクですからね。
そんなキムタクと、倍賞千恵子を筆頭とした山田洋次作品常連組による「東京版パリタクシー」。そういう目線で見ると、この映画、めちゃくちゃ面白いんですよね。
流石に「原作を超えた」とは言い切れないながら、ある程度原作を意識して「あーでもないこーでもない」と言いながら見るのはかなりおすすめ。おそらくこの映画の、一番楽しい見方なんじゃないかと。
どの程度の評価となるかは好みによる部分もあるかとは思いますが、とはいえ作品としてのレベルは決して低くはない作品なので、一度は見ても損はないかと。原作ファンには特におすすめです。
個人的にも、作品全体として原作を超えたと言い切れはしないものの、ただ一部のシーンは断然こちらの方がいいと思えるシーンはありました。
そもそも日本人の中高年以上のかなりの割合は『男はつらいよ』などの山田洋次エッセンスに相当慣れ親しんでいる訳でして、それに加え「木村くん」時代から知っているキムタクや、これまたいい感じにおばさんになった優香や、かつては国民的妹キャラであった「倍賞千恵子」のちょっと面倒な老人姿など、既に全盛期をすぎ、いい感じにくたびれた彼らの、それでも晩節を汚すことの無い「円熟さ」にはかなり胸を打たれるものがありました。
特に近年は、円熟どころか、告発やら不祥事やらで晩節を怪我しまくる芸能人が多いので、尚更、思い出が思い出であり続けてくれるありがたさに胸を打たれるものがありました。
そういう部分に関しても、原作にはない、邦画である今作ならではのちょっとした魅力かなと。
逆にこの作品から原作に遡るというのも勿論おすすめです。原作も原作でかなりの名作なので。
ということで今回はこの辺で。最後までお付き合いいただきありがとうございました。